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不思議な透明感「スカイ・クロラ」のこと

これまでの押井守監督の作品の登場人物は何かの使命や宿命を背負っており、
それに押しつぶされそうな閉塞感を感じるような作品が多かったですよね。
ところが、今回の「スカイ・クロラ」を観た後に残る印象は、
青い空と、そこに浮かぶ白い雲です。
舞台となるのは戦争がゲームとなっている架空の世界。で、そこではプロの戦闘機乗りたちが
命を賭けて空中戦を繰り広げています。
その戦闘機乗りは「キルドレ」と呼ばれる「年を取らない」特別な人間たち。
主人公は前線基地に「転勤」してきた戦闘機乗り。過去にも同じように転勤してきて
「戦死」した前任の戦闘機乗りの存在が影を落とします。
主人公たちは戦う空中戦はかなりの迫力で描かれますが、それ以外は青い空と白い雲の下での
淡々とした日々。
「死」と隣り合わせの「永遠の青春」という対比と、そのなかで苦しみながらも「生きる意味」を
探ろうとする登場人物たち。
「人はどこから来て、どこへ行くのか」という根源的な問いかけを戦いの中で続けていくのです。
おだやかな描写と戦闘シーンの迫力の対比も鮮やかで、戦闘機のディテールのリアリティなどは、
さすが押井監督らしいこだわりで、設定マニアも喜びそう。
ただ原作は壮大なシリーズで、前日譚などがたくさんあるようです。これから全部読むのは
大変かなあ。
人間に作られたレプリカントが自らの生きる意味を問いかける名作「ブレードランナー」を
思い出しました。

(2008.7.25)
何も言えない!「ハプニング」のこと

M・ナイト・シャマランの新作。しかし懲りずに撮ってますねー。
前作の「レディ・イン・ザ・ウォーター」の失敗でついにホサれたんじゃないかと心配してたのに。
毎回つっこみながら観るのが恒例となっているのですが、なぜだか観に行ってしまうのは、
やはり「もしかしたら傑作になってるかも」と気になるからでしょうね。
(「レディ・イン・ザ・ウォーター」なんか試写を見逃したので劇場まで行ったもんなー)
さて。てなわけで。「ハプニング」です。
うー何も言ってもネタばれになるからなあ。ただ、それほどトリッキーな映画ではなくて、
むしろサスペンス重視のミステリー映画です。
観終わった後、ボクが連想したのは巨匠アルフレッド・ヒッチコックの名作「鳥」です。
話の骨格というかアイディアがよく似てるのかなあ。
唐突に始まる「異変」。それに翻弄される純朴な人たち。まあ残念ながら「鳥」と「ハプニング」を
比べると、「鳥」のほうが1万倍良いとは思うのですが。
でも、シャマランの映画に惹かれてしまうのは、彼が未だに「自主映画作家」だからじゃないかなあ。
自分の発想を核に、自分の周りの世界を舞台にして物語を綴る、という路線を外さない。
それも核となるのは「死者が自分の死を知らずに現実世界をさまよう」「ミステリーサークルは
本当に宇宙人の仕業で地球に侵略に来る」などの、シンプルなワン・アイディア。
ハリウッドの映画製作の世界でそんな自分の守り続けているシャマランには、
この調子でがんばってほしいのです。
まあギャラは高すぎると思うけど。
ちなみにボクの個人的ランキングは以下の通り。皆さんはどうですか?
「シックス・センス」>>>>「サイン」>>「ヴィレッジ」>「ハプニング」>>
「アンブレイカブル」>「レディ・イン・ザ・ウォーター」
でも、一度ヒッチコックの「鳥」をぜひ観てほしい!

(2008.7.25)
コミックヒーローの映画化のお手本「アイアンマン」のこと

コミック原作のヒーローを一流の役者とスタッフで、大人の鑑賞に堪えるように
大真面目に映画化するというのが昨今のハリウッドのノウハウですが、この「アイアンマン」は
まさにその王道を行く映画化作品です。
デザインもそれほど垢抜けていなくて、鉄の強化鎧を着て戦うと言う、かなりバカバカしい
アイディアをここまでしっかりと映画化するという意気込みにまず感動します。
しかも演じる役者が、ロバート・ダウニーJr.。相手役がグウィネス・パルトロウ、などと
一流の役者陣。これまでの青年主人公と違い、酸いも甘いも味わった大人の主人公です。
巨大兵器産業の若き天才社長トニー・スタークは、テロリストに誘拐され、自分たちのための
武器を作るように強制されます。そこで、トニーはこっそりテロリストのために武器と偽って
「鉄製の強化服」を手作りで完成させたのです。(おいおい。マジかよ)
そして、自らそれを着てテロリストを倒すと無事に帰還します。
トニーは自分が開発してきた武器が多くの命が失われたことを知り(気づかなかったのかよ!)、
自分に課せられた運命を悟ると、強化服を改良し、正義の「アイアンマン」となるのでした!
・・と書くと本当に典型的なヒーローもののフォーマット。
カラダは改造されながらも脳の改造前にショッカーを逃げ出した仮面ライダーや
デーモン族を裏切って人間の見方になったデビルマンを思い出します。
ただこの映画が違うのは、その過程、ディテールをじっくりリアルに描くことなんです。
トニーが自分の使命に気づくシーンの演技や、細かい失敗を重ねながら鋼鉄スーツを
開発していく過程などがすげー面白い。なかなかうまくバランスがとれなくて空を飛べなかったり
デザインや色を決める描写があるなんて!
ラストにはある人物が登場して、今後のマーベルコミックの映画化作品がお互いに
リンクし合うことを暗示するのですが、この辺はまだまだお楽しみがあるということで
大いに期待されます!
(2008.7.21)
原点に戻って楽しい「インクレディブル・ハルク」のこと

以前にもアン・リー監督、エリック・バナ主演で映画化されましたが、あまり評判が
良くなかったようで、「なかったこと」にされて、再度の映画化です。
ボクはそれほど悪くなかったと思うんだけど。
なんかハルクがやたらジャンプしてた記憶しかないのですが。
今回すごいのは、「ハルク誕生秘話」をあっさりオープニングの数分で説明しちゃっていること。
なんでも昔のテレビシリーズ(なつかしいなあ。ビル・ビクスビー主演で、「逃亡者」風の
ロードムービーになってたよね)のオープニングに倣っているらしい。
だから、物語が始まったときには、すでにハルク=バナー博士は逃亡中で、
ブラジルのスラムに潜伏しているのです。
ハルクが生まれた経緯なんて、観客はみんな知っているものとして、割り切っているわけですね。
ある意味潔い。
まあ、そこからドタンバタンのおっかけっこが始まるわけだ。
今回主演のエドワード・ノートンが脚本にも参加していて、「ハルクのキモは肉弾戦だッ!」と
極めて正しい認識の下に、ちゃんと敵役も登場させ、本当に肉弾戦のクライマックスに
持っていきます。
変身後のハルクの動きや表情は、エドワード・ノートンが実際に演じたものを、
モーション・キャプチャーしてCGを作っているらしいですが、正直動きも速過ぎて
あんまりよくわかりません。前作ともそんなに違わないみたいなんだけど、技術は
進歩しているんだろうなあ。
ただエリック・バナよりも優男で、暗めのキャラも幸いして、変身後との落差がより激しいという
より効果的なキャスティングと言えます。
恋人のリブ・タイラー(ちょっと太ってオバハンぽくなったのが残念!)が、「シャツは出したほうが
いいわ」とズボンに入れていたシャツを外に出させるあたりなんか笑えました。
ラストに他のマーベルコミックシリーズとリンクする設定が出てくるのがコミックファンには
楽しい。
(2008.7.21)
そこそこ楽しい「スターシップ・トゥルーパーズ3」のこと

異能の変態巨匠ポール・ヴァーホーヴェンの傑作「スターシップ・トゥルーパーズ」の
久しぶりの続編です。
第2作はなかったことにしてんのな。フィル・ティペットかわいそうに・・・。
というわけで1作目に続いて、ジョニー・リコが主人公です。
監督はこれまで脚本担当だったエド・ニューマイヤー。さすがにヴァーホーヴェン監督ほどの
変態ではないですが、端々にズレた感覚があってそこそこ楽しめるのです。
まあ今回の設定で一番面白いのは、話のカギを握る地球軍の総司令官
オマー・アノーキですね。
総司令官なのに歌手で、ヒット曲を連発してるというキャラ。
女性隊員がファンでサインほしがったりして。ちゃんと歌うシーンがあって、ちゃんと
PVとか作ってるのが笑えます。
本当は“マローダー”と呼ばれるパワード・スーツがついに登場!というのが
ウリだったはずが、残念ながら活躍場面は最後に少しあるだけ。画期的な映像でもなく、
まるでスチュアート・ゴードンの「ロボジョックス」?
次回作に期待せえということかなあ。
でもひたすら暗くて何やってるのかよくわからなかったパート2よりは
楽しめるのは間違いないです。
(2008.7.19)

